水素の製造に関わる問題点
水素は燃焼しても、地球温暖化ガスのひとつである二酸化炭素(CO2)が出ないものとして、水素エネルギーを活用として、世界中で取り組みを行っている。特に日本では、東日本の原発事故以降、代替エネルギーとて水素に注目をしており、クリーンな水素社会を目指すべく力を入れている。
水素の埋蔵量は無限に近いのですが
水素は、地球上では、ほとんど存在しておらず、炭化水素かもしくは水という状態で存在している。そのため、この化合物から水素を製造する必要があります。現在は、工場での生産ラインの副生成物として出る水素を濃縮して使用したり、石油を改質して使用して水素を製造していますが、水素社会を目指す日本としては、コスト面や供給面から、水素の製造については、真剣に考える必要があります。
様々な水素製造方法
工場生産の副生成物として水素製造を行う方法
1)苛性ソーダの副生成物
苛性ソーダーは、塩水を電気分解する事で、作られますが、副生成物として、水素と塩素が発生します。
この水素は、純度が非常に高く別利用としては、良いと考えられている。1tあたり280Nm3の水素が発生し、年間約350万トン生産している苛性ソーダを考えると、10億Nm3の水素が取れる計算になります。
しかし、一部では、工場内リサイクルとして、水素を燃料として使用している工場もある。また、現在水素が発生させないで、苛性ソーダーをつくる方法を検討中のため、目先の供給元としては、良いが将来性は困難
2)鋼鉄製造工程の副生成物
苛性ソーダ生成の時よりも、濃度は下がるが、鋼鉄生成の時に、コークスを燃焼させる時の工程で、水素が発生する。水素濃度としては、50%程度であるが、生産量は安定的であるため、水素発生量としては、70億Nm3程度はある。しかし、苛性ソーダと同様に工場内での利用がある場合は、生産に対して別のコストが発生するため、目先の供給としては、良いが、将来的には難しいと思われます。また水素濃度が50%と低いため、濃縮の工程が別に発生する。
3)石油精製による、副生成物
石油精製では、水素が実際発生しているが、脱硫工程でほとんど使用してしまい、水素発生装置を使って、工程にて消費しているのが、実情である。実際外販目的で、水素を作った場合は、すでに、副生成物とは言えない状態となる。
水素製造の既存生産方法
1)アンモニア生産ラインの活用
アンモニアは、石油等が作った、水素と空気中の窒素を反応する事で、生成するものです。アンモニアの生産は年々減少している事から、余剰設備を利用する事が出来るのではと検討している。しかし、石油から水素を取り出す時に、二酸化炭素(CO2)が出てしまうデメリットもある。また、アンモニアの需要によって左右される問題もある。
2)化石燃料からの改質
アンモニアも同様の方法で、改質を行っているが、水蒸気改質方法などを使い、化石燃料と水を反応させて、水素を作り出す方法であるが、二酸化炭素(CO2)が出るというデメリットがある。ただし、水素の供給については、1番具体性の高い方法である。
3)電気分解による水素製造方法
水の電気分解による、水素の発生装置については、中小企業に対して普及している。二酸化炭素を出さないためクリーンエネルギーではあるが、1m3の水素を製造するのに、5~6kWhの電力が必要とされるため、電力を安価に調達しないと高コストの水素となってしまう。
今後期待される水素製造プロセス
1)触媒法
Tiベースの光触媒を使って水と紫外線から水素を発生する方法。CO2も発生せず、理想的なものと考えるが、実際研究段階の技術であり、実用化には至っていない。ただし、水から水素への変換が、10%程度を越えれば、実用化が近くなるとされている。ランニングコストは非常に安くなるが、初期投資は高くなると予想されます。理想的な方法である。
2)ISプロセスによる水素製造
水を直接熱で、分解して水素をとりだそうとしたとき、約4,000℃の温度が必要ですが、I(ヨウ素)とS(硫黄)を使って水素製造を行うと、900℃で、水素を発生させる事が可能になる。高温炉を使えばCO2の発生は抑えられるが、熱源に対しては、CO2の発生は防げないと思われる。
3)熱分解方法
コロラド大学が考えた太陽熱エネルギーを利用した分解方法がある。巨大なパラボラアンテナ状にして、太陽の熱エネルギーを一点に集めて熱によって分解する方法。水の温度を1300℃まで上昇させていくと、水に含まれる、鉄、コバルト、アルミニウムが、より酸化しようとして、水の中の酸素を吸収して酸化物となっていく事で、水素を発生させる方法であり、もちろん二酸化炭素も発生しない。但し膨大な熱量が必要なため、砂漠地帯のような場所でないと実用化は難しい。
具体的な水素製造方法
既存技術で、クリーンな水素発生方法としては、電気分解法が1番に考えられるが、コストが高いというデメリットがあります。今現在、燃料電池に水素を利用した時と仮定した時に、ガソリン車の場合91~130円/Lは換算すると、水素ガスの場合40~70円/m3に相当する。その一方で、電気分解の場合、約90円となると推測されている。そしてまだ、確立出来ていないが、IS法が、60~70円とやっと価格的に採算があうものと考えられている。
実際問題として、温室効果ガスの問題については、減少対応が出来ないが、当面の間は、化石燃料等からの改質によって水素を取り出す方法が具体的と思われる。しかし専用の生産整備が必要になるのは言うまでもありません。個人的な見解ですが、現在ある原発を稼働させて、電気分解で水素を発生させるという方法を提案したい。原発は実際稼働しても、停止してても危険度は変わらないため、発電能力がなくなる限界まで、使用して廃炉にするのも良い方法かもしれません(実際は反対も多いと思いますが)
今後検討すべき、水素製造方法
水素製造のコンセプトとしては、やっぱりクリーンエネルギーです。そのためコストのためとはいえ、石油から精製する場合、二酸化炭素は発生は、防げません。そのためいくつかの具体的な方法を提案します。
1)自然エネルギー発電+電気分解による水素発生
太陽光発電、風力発電は、稼働が始まると常に発電をしつづける発電装置です。太陽光では、昼間の過剰発電の一部が余剰電力に風力発電は全体使用量が減る 夜が余剰になると考えられますので、その余った余剰電力を使って、電気分解による水素製造を提案したいです。それならば、電気代は実質無料。(コストは通常送電にすべて乗っけるとして)水素製造によって電気をためこむ、というのは如何でしょうか。実際ドイツでは、風力発電は工場用として、昼間しか使用しないため、夜間の水素製造を検討している記事がありました。
2)売電から水素製造に
現在太陽光発電については、国の指針によって売電を実施しているが、この期間が切れたときの選択肢として、水素発生装置の設置とエネファームの利用併用が利用できると考えられる。エネファームは、天然ガスを使って、水素を発生させ、燃料電池によってお湯を沸かしたりしています。昼間の余剰電気を水素発生に回して、エネファームで電気にもどすのは、以外と経済的にも使用できる方法ではないだろうか
3)光触媒による水から水素を取り出す方法
科学技術振興事業団 戦略的創造研究推進事業継続研究にて研究しており、東京工業大学資源化学研究所 堂免 一成教授によると、Taをベースにした光触媒によって、水素の発生が見られた。もともとTiを使用して紫外線で水素を発生させようとしていたが、Taベースに変えて、紫外線だけでなく、可視光も使用する事で、水素の発生量が増加したという。しかし、泡がブクブクと出る程では無いとの事です。しかし堂免教授は5年以内には実用性を実証したいと考えているので期待したいです。
まとめ
水素の製造については、実用的なものは、二酸化炭素の排出があり、クリーンでは無い。製造に対して高コストである。具体的な製造方法が確立できていないと問題を抱えていますが、クリアーの可能性は高いと思われるがハードルは高い問題である。
参考資料
CO2出さない水素製造事業、巨大市場見据え世界で始動
水素の製造、輸送・貯蔵について
水素の作り方
水素燃料
様々な水素製造法