水素ステーションは、FCV(燃料電池車)にとってのガソリンスタンドです。しかし、その水素ステーションの普及が、FCVの普及に対して、壁になっています。水素ステーションの問題と今後の展開についてまとめました。

 

水素ステーションの問題と今後の展望

2015年10月 東京モーターショーで、次世代カーとして非常に注目を浴びたのが、FCV(燃料電池車)です。トヨタ自動車は、FCV(燃料電池車)である、MIRAIを発売しました。高級車並みに700万円と非常に高価ですが、現在購入に対して、約200万円の補助金が発生しており、中型クラスの並みで購入出来るようになっています。これは、政府の方針で、水素で動く燃料電池車にいかに力をいれているかが見られます。そのMIRAIの次世代カーである、FCV Plusを発表しましたし、ホンダは、発売間近のCLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)を発表しました。しかし水素を燃料とするFCV(燃料電池車)は、どうして燃料供給場所が必要となり、インフラとして、水素ステーションが必要になるのです。しかし、水素ステーションの設置については、まだそれほど進んでいないのが現状です。

水素ステーションの現在

水素ステーションは、ガソリン車であれば、ガソリンスタンドと呼ばれるもので、FCV(燃料電池車)に水素を供給する場所になります。東京ガスやENEOSといった、燃料供給企業が、水素ステーションの設置に力をいれており、2016年6月現在全国で、約90カ所の水素ステーションの設置がされています。ただし東京・神奈川・名古屋・大阪・北九州と首都圏を中心に設置が進んでいるため、その他の地域での水素ステーションが無く、遠方へのFCV(燃料電池車)での移動等については不安があり、FCV車の普及に対して、障壁となっているひとつでもあります。しかし、FCV(燃料電池車)が普及しなければ、水素ステーションとしても、運営が出来ない事もあり、卵と鶏の関係は、否めません。

水素ステーションの設置と補助金

水素ステーションについては、全国のガス会社、ガソリン会社等が参入にかけて力をいれており、H28年度の補助事業として申請をしている企業が非常に多いです。次世代自動車振興センターによりますと、水素供給量や規模によって異なりますが、補助額として、経費の2/3で、上限は、290百万となっており、非常に高い補助率となっています。水素が将来的に化石燃料から完全に変わった時の危機感として、新事業転換を視野に入っていると思いますが、現在水素の供給方法としては、石油やガスなどの化石燃料から水素を取り出して、水素供給をおこなう水素ステーションが多いと考えられます。

FCV(燃料電池車) MIRAIで考える、実際の燃費は?

水素ステーションで、供給される水素については、場所によってかなり違うとされていますが、1,000~1200/kgとされています。トヨタのFCV(燃料電池車) MIRAIのタンク容量は、2つのタンクを合わせて、122.4Lで、満タンにした金額として、4300~4700円になります。MIRAIは満タン状態で、約700km走るとの事で、6.1~6.7円/kmのコストとなります。また、車種を特定は出来ませんが、現在のガソリン単価140/Lとして 燃費が、23km/L程度の車種の場合  価格は6.1円/kmと水素の比較すると、FCV(燃料電池車)は非常に燃料価格も安く提供していると考えられます。

そのため、水素ステーションの建設費用は、規模によって異なりますが、4~5億円といわれ、補助金として、2.9億円まで、補助対象となっているが、1,000/kgの供給では、割安過ぎて、投資コストとして合わないのではとの意見もあります。

水素ステーションの水素供給方法

水素ステーションとしては、現在様々な方法での水素の製造を検討しています。その中でも水素をどのようにつくるかが、非常に課題として大きい問題です。

化石燃料から水素をつくる

これは、石油、天然ガスなどの炭化水素を高温の水蒸気等と反応させる事で、水素を発生させる方法ですが、副生成物として、CO2が出来てしまう。また、製法によっては窒素酸化物もでていまう方法です。但し、水素発生のコストが1番安価な方法で、初期の水素の生産方法としては、主流となるものです。しかし、クリーンエネルギーの目標からは逸脱しており、将来的にはなくなる方法とおもわれます。

既存発電所の電気エネルギーで水素をつくる

既存の火力・原子力で作った、電気エネルギーを使って、水を電気分解する事で、水素を取り出す方法です。これも既存の発電所を減らす事が出来ないのと、エネルギー変換効率は、非常に悪い方法です。

工業プロネスの副産物

鉄工所の、コークス炉では、水素を約50%ほど含まれるガスが発生する。そのガスを利用する事が検討されているが、燃料として使用される水素としては、濃度が薄い事もあり、濃縮をする必要があります。また、苛性ソーダを生成工場でも、副産物として、水素が発生するため、これを回収して使えれば、安価に水素を調達ができます。ただし、あくまで、副生成物であるため、供給量の保証等はできないのと、取り出した、水素をどうやって運ぶかは、課題としてあります。

自然エネルギーを使った、水素づくり

太陽光発電や風力発電などの、自然エネルギーを使用した、余剰電力を使って、水から電気分解で水素を取り出し、水素を取り出して利用する。風力、太陽光のように、発電にムラがある事から発電量が高い時に、余剰電力を水素に変えて貯蓄する考えで、石油や石炭を使った方法とはことなり、CO2の発生も無いないため、エネルギー効率は良い。しかし電気分解での水素発生等について新規の設備投資が必要となります。クリーンエネルギーとしては、非常に理想的です。

水素ステーションへの水素の輸送

水素ステーションへ水素を供給するために、現在はタンク等での輸送が多いですが、石油、天然ガス等からの改質によって、水素を取り出している方法は、水素ステーション内で作り出すなど検討しているものもあるが、主流としては、タンクによる輸送や、水素ステーションにパイプラインを繋げての供給が検討されています。

しかし、水素の問題としては、その大きさです。宇宙一小さい水素を完全に閉じ込めておく事が非常に困難なためです。水素をいれるタンクについて、水素が漏れないように、パッキンの改良等がさらに必要になってきます。特に水素ステーションのように大量に水素がある場所については、気をつける必要があります。水素は人が吸ったとしても毒性もなく問題ないのですが、4%以上の高濃度となると、引火の危険があります。特に水素は、燃焼スピードが早いため、爆発等にもつながります。

また、水素の特長として、金属をぜい化させる性質があります。そのため、水素を入れるタンクの品質にも、未だ研究等が必要です。逆に、水素のぜい化を利用してつくられたのが、水素吸蔵合金ですが、これは、水素を金属に吸収させて固定化をする方法です。現在水素吸蔵合金については、様々な研究されていますが、まだ、実用化までは、至っていないのです。ただし、これによって、タンク無しに自由に保管が出来るのは非常にメリットが高い方法です。

参考資料
水素ステーションはどこまで普及したのか、今後を占う規制緩和と現在地 (1/3)
トヨタ
水素ステーション
水素ステーション
水素ステーション一覧