水素は燃料電池を初めとして、現在日本政府では、原子力に変わる新たな、エネルギーとして力を入れています。しかし、原子力の二の舞にならないか不安の部分も非常にあります。
水素燃料がクリーンエネルギーと言われる理由
注目される水素燃料の背景
2014年に、世界初燃料電池車(FCV)として、トヨタ自動車より、MIRAIが発売されました。現在日本政府は、経済産業省を中心にして、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」なるものに力を入れており、その一環として、水素燃料で走る、燃料電池車(FCV)への力の入れ方は、MIRAIに対する補助率の高さからもうかがえる状態です。実際補助金としては、約200万を超える金額となっています。また、ホンダも引き続き燃料電車の発売を予定しており、2015年のモーターショーでも発表を行いました。しかし、戦略かどうか不明ですが、納車は、2019年頃と、市場で見れるのはまだ先のようですが、実際インフラ等の問題を抱えていため、市場投入が難しいのも当然かもしれません。
水素燃料に力を入れる理由としては、2011年の東日本大震災によって、原子力発電所のイメージが一気に地に落ちたことが言えるでしょう。それまでは、地球温暖化防止対策として、日本では、CO2の削減に力を入れており、化石燃料を燃やして電気を取り出す方法よりも、原子力発電の方が環境には優しいと日本政府が判断した事が発端になります。もともと、廃炉の問題と、使用済み核燃料の処理について未来へ先送りしていた結果が今回の東日本大地震によっての大惨事に繋がったと思われます。
そんな事があり、次にターゲットとなったのが、クリーンエネギーとされる水素燃料です。
水素の燃料は、究極のクリーンエネルギー
水素を燃料として使用する場合の利点として上げられる物として、大きく次の3つが上げられます。
☑発電した時に出るのは、無害な水だけ
☑水素はエネルギー効率が高い
☑地球上には水素は無尽蔵にある。
水素が燃焼して、エネルギーを取り出す時には、下記のような反応
2H2+O2 ⇒ 2H2O+ エネルギー
をしています。燃料電池と言われるものは、水素と空気(酸素)を入れる事で、直接電気を発生させ、副生成物としては、水だけという優れた技術です。また、エネルギー変換効率は、30~70%とバラツキはあるものの、かなり高いレベルである。(参考ですが、原子力発電33%(ドイツでは10%と言っている)、火力発電(40~43%)、水力発電(70~80%))
確かにこれだけ見れば、水素の燃料に非常に将来有望とみえますが、まだ、超えなければいけない、障壁があります。
水素を燃料として使う場合の壁
水素燃料の埋蔵量
よく水素は地球上にたくさんあると言われますが、水素が燃料として、使える状態のものは、大気中には、1ppm以下となっています。また、化石燃料のように、水素がどこかに塊としてあるわけではありません。実際世の中で言っているのは、「プラスチックのゴミの山を見て、ここに石油になるものがいっぱいあるから使えば良い」と言っているのと同じです。水素の大半は、海水になっています。また岩石等の一般的に無機化合物と言われるものにも含まれています。もちろん生物の体内にも含まれています。
水という水素化合物から、燃料としてつかえる水素を単離するためには、一般的に電気分解しかありません。
2H2O +エネルギー ⇒ 2H2 + O2
水から 水素を取り出して、それを燃料電池として使用して、水にもどす この工程を考えると、今の処エネルギー収支をマイナスになります。不効率な方法で現実的では無い。
1番コストが安い方法として取り上げられるのが、化石燃料から水素を取り出す方法です。
石油を水といっしょに高温加熱する事で、水素を取り出す方法で、現在の処は、生産コストとしては、1番安価ですが、最初のコンセプトから外れます。生産の過程で、CO2やNOxが発生してしまうからです。ただし、水素燃料の供給源としては、当面の間は、この方法しかないと思われます。
水素燃料の供給源としては、工場の排水素の利用が考えられます。もともと廃棄していたものですので、コストが安価と考えられていますが、濃度が薄いため、濃縮工程が必要ですし、ぞのように回収するのかが、命題になっており、現実的では無いです。
一方で今後期待できる最新技術としては、
1)触媒分離方法
エネファーム等では、一部で実用化していますが、天然ガスを改質フィルターを通すことで、水素を単離する事が可能になっています。しかしこれも蒸気等を利用しているようです。
2)混合ガスからの水素の単離
宇部興産が開発をしている、水素が原子量が小さい事を利用した、分離膜などは、気体混合物限定であるが、エネルギーもかからずに水素を単離する方法としては、良いかと思います。
3)太陽熱で水の加熱分解
この方法は、場所限定のようであるが、コロラド大学が考えた太陽熱エネルギーを利用した分解方法については、太陽熱によって、1300℃までいくと、水に含まれる、鉄、コバルト、アルミニウムが、より酸化しようとして、酸素が無くなるため、水素を単離できるようになるようです。
水素の貯蔵と輸送方法
インフラとして必要なのが、水素ステーションです。ただ、水素は貯蔵が非常に難しいものです。理由としては、まずは元素として非常に小さい事で、密封する事が非常に困難です。燃料として使用する水素は、純度が高くなります。そのため余計に、水素を密閉するのが、困難な状況があります。また、水素は、他の原子間のすきまに入りこむ性質があります。そして、金属をぜい化させる性質があります。NASAは宇宙ロケット等はこの問題に頭を悩ませています。
そのため、水素ステーションへの保管も問題がありますが、水素ステーションへの輸送についても、どのように行うかが課題となっています。そのため、目先の対応としては、天然ガス等から水素ステーションでの生産が具体的です。
また、水素のぜい化を逆に利用した方法としては、水素吸蔵合金があります。実際これも実験段階としては、よいものですが、商業利用までなっていないため、具体的な開発を期待したいものです。
水素発電設備
水素発電としては、現在の火力発電を改造して、水素を燃料として使用するのが、現実的のように思うが、水素濃度が4~75%の場合着火するが、着火すると拡散性が高く、燃焼にムラがおきやすく、一部分の燃焼力も弱い。そのためボイラーの燃焼には向かない欠点がある。使用するためには、他の燃焼ガスを混ぜる必要があるが、CO2削減等のメリットもなくなる。
そのため、水素を燃料として使用する場合は、燃料電池が1番効率的であるが、現在の発電所の代替となるような巨大なものは、具体的にはすすんでいない。
このように、水素の燃料としての利用については、いくつものハードルがある。
個人的な構想であるが、
近未来で、1番具体化しやすく、環境に良い方法としては、太陽光、風力などの自然エネルギーを使って、電気分解をして、水素を発生させる。この水素は、実際は、バッテリーと同じ考えで水素として保管。この水素は、水素吸蔵合金に取り込ませ、各家庭の燃料電池で水素を使って、発電をおこなう。いままで通り送電線等も必要にはなるが、各家庭で必要に応じて、水素を作って保管して、足りない時にバッテリーとして水素を使用する。もちろん家庭で使用する太陽パネルも発電元としても使用できます。
こんな社会は、如何でしょうか?